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​第一章

毛布の押し売り

冬が近づいて、外では風がピューピュー吹いていた。

ピヨンくんは最近出してきたこたつに細いあしを入れてお菓子を食べていた昼下がりのことだった。

ピーンポーン

テレビの音に紛れて、家のインターホンが鳴った。

宅配便だろうか、知り合いだろうか・・・

​外に出なくてはと思いながらもあったかいこたつから出たくなくて、しばらくボーっとしていた。

ピーンポーン、ピーンポ、ピーンポーン

今度は何回も鳴った。

こんなにしつこく鳴らす人は、どうせ知り合いだろう・・・

「すいませーんっ」

外から聞こえてきた声は、友達のミヨンくんっぽい。

「入ってきて」

ぼくはそう叫ぶと、ガッシャンと門があいて、ドアを開ける音がした。

 

ガラガラガラガラ

こんどは自分がいるリビングのドアが開いた。

「いやぁ~、久しぶ・・・」

あれ?

知らない男の人が一人やってきた。

「えっあの、誰ですか」

「あ、どうもどうもこんにちは、こちら株式会社モッフモフ毛布の吉原と申します。」

「お客さぁ~ん、これからの季節さむぅ~いですけど、あつぅ~い毛布いかがですかぁ?」

「押し売りじゃないですか、いらないですけど」

「いゃいゃお客さぁん、うちの毛布ただの毛布じゃああ~りませんよぉ!」

「実はですねぇ」

「いらないですよ、毛布なんていっぱいありますから」

「どんな毛布ぅ、お使いになられておられまぁすぅかぁ?」

「どんなって、そこに置いてるじゃないですか」

「あっ、あああああっ、あなた、こぉんな汚い毛布使ってはるんですかぁ」

「汚いですか?」

「こんな毛布で寝ているとですねぇっ、肺が腐って病気になっちゃいますよぉ、いいんですかぁねぇ」

「そうですか、それは困りますね」

「でしょでしょ、で、お客様、この毛布どぉですか?」

「この毛布、絶対にカビも生えない、ダニも湧かない」

「そりゃ、いいですね」

「しっかも、この手触り、ふっかふかでしょ」

「たしかに、すごいですねぇ」

「いやでも、値段はどうなんですか?」

「それがですねぇお客様ぁ、なんと200円で買えちゃうんです」

「え、ゑっ、たった200円ですか」

「はいでございますよぉ、今だけの特別価格でございます」

​僕は迷ったが、たった200円ならと買ってみることにした。

「じゃあ買います」

チャリン チャリン

200円を渡した。

「あぁりがとうございますぅ、また今度送ります」

「えっ、今くれないんですか?

「ちょっと今在庫がですねぇ・・・」

「配送ですか?」

「はい、そうです。配送だけに・・・」

「・・・」

「わかりました、じゃ、また送ってください」

​「じゃあ僕はこれで・・・お邪魔しました・・・」

押し売りは大きなトラックに乗って、帰っていった。

​<第一章 終>

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