第二章
ふとんタワー
あれから一年が経った。
クリスマス騒ぎが過ぎると、もう町中どこもかしこもお正月モードになっている。
大掃除を終え、おせちを買ってきて、親戚がもうすぐやってくるだろうと待ち構えていると、
ピーンポーン
「あっ、来た来た」
親戚が来たのだろう。
僕は玄関まで行き、ガラガラガラガラっと戸を開けた。
うわっ、誰?
見ず知らずの男の人が立っていた。
「誰っ、誰なん?」
どこかで見たことがあるような気もしなくもなくもないけど、親戚にこんな人いない。
それに、スーツを着て、書類を持っている。でも同じ会社の人でもない。
「誰ですか・・・」
「いやぁ~どうも、株式会社モッフモフ毛布の吉原と申します」
「あっ」
そうだった、思い出した・・・
毛布を送るといったままずっと届かなかったあのモッフモフ毛布の吉原だ。今日やっと届けにきたんだな
「お客様ぁ~こんど新商品が発売されることになりましてぇ~、ふとんタワーという商品でございます。大人気商品でございますからぁ~デパートもアパートもみな品切れのため買えないんでぇ~すが、今回は特別に・・・」
「あの、それよりも、前買った毛布は・・・」
「ふとんを積み重ねているとなだれが起こったりなんかしませんかぁ、そんなときに大役立ち。この4本の支柱で積んであるふとんが崩れないようしっかり支えます。」
「今回は特別にですねぇ、お客様だけにぃお買い求めいただきたくてぇ~、特別価格で200円ってとこで。」
「ちょっと、去年買ったあの毛布いつ届くんですか?」
「通常価格19800円のところぉ、今回は200円でぇ・・・」
「ちょっとちょっと、それより毛布はやく送ってくださいよ」
「なんと200円でお買い求めいただけるんですよぉ、こんなチャンスはもうあ~りませんっからねぇ・・・」
まるで壊れたおもちゃのように同じことばかりいって、こっちの話は全く聞いてくれない。
「200円です。200円ですよぉ~200円。200円で買えるなんてぇ~、200円ですから、ね、200円」
「ちょっと!!!」
僕は大声で叫んだ。
「200円200円ってうるさいんですよ、それより僕も毛布どうなったんですか」
「へ?、、は、はい?」
「去年モッフモフ毛布の吉原って人から毛布買ったのに届かないんですよ」
「・・・」
「ね、安いでしょ200円。200円よ。200円で買えちゃうんだから」
「それさっきも聞きましたから」
「200円200円200円。たったのたったの200円。ね、たったの200円。いいでしょ、たったの200円。」
「もう帰ってくださいよ」
「200円払ってくれりゃすむんですよぉ~安いよたったの200円、ダメ?、ダメ?、ダメェ」
「ケチねぇ、たったの200円がそんなに惜しいのかしらぁ、あたしこんなケチな人初めてよ」
「200円で済む話じゃないの、ねぇ、ねぇ200円、ねぇ200円」
「はいっはい、払えばいいんでしょ」
「はあーっ、お客様はやっぱりお目が高い。うちの最高級ふとんタワーを選ぶなんてなかなかのふとんマニア
ですなぁ」
「もう、いいから帰ってください、僕だって忙しいんで」
「じゃあまた今度発送しますんで」
そういって帰っていくところを何気なく見ていると、押し売りは隣の家へ入っていった。
やがてしばらくすると、200円200円とねだる声が隣の玄関から聞こえてきた。
<第二章 終>